財団法人逸翁美術館は、小林一三翁(1873.1.3〜1957.1.25)の雅号「逸翁」を冠して館名とし、旧邸「雅俗山荘」をそのまま展示の場として、1957年10月に開館しました。収蔵する美術品とともに、その佇まいもまた、翁を偲ぶもっともよき記念物といえましょう。
翁は明治6年(1873)、山梨県韮崎市に生まれ、生れた日をとって、「一三」と名付けられました。明治・大正・昭和の実業界で活躍し、阪急電鉄をはじめ、阪急百貨店、東宝などの阪急東宝グループを起こし、太平洋戦争直前の難局に商工大臣を、戦後の混乱期に国務大臣兼復興院総裁を歴任しました。
しかし、それらの業績とともに、翁の人となりを語るものに、宝塚歌劇の創設と、演劇、映画における芸術活動、「小林一三全集」七巻におよぶ著述、さらに茶道における大乗茶道の提唱と実践があります。
逸翁のコレクションは20歳代から一部の収集がはじまっていますが、茶の道に入るや天性の審美眼はいよいよ磨かれ、厳しい研究家の態度で一品一品に対し、いつか収集も数千点に達しました。
翁は日本的な美術鑑賞の場である茶会においてこれらを披露する一方、文化の向上に資する一般公開を計画しましたが、実現を前に他界、その遺志により当美術館を設立したものであります。
館蔵の美術工芸品5000余点は、古筆、古経、絵巻、中近世の絵画(特に蕪村・呉春・円山四条派のコレクション)、国内はもちろん中国・朝鮮・オリエント・西洋を含む陶磁器、日本・中国の漆芸品に及び、茶人逸翁の美術への想いと茶道への深い理解を語るものであります。
全体を通じて書画約1600点、陶磁器約2500点、その他1000点、うち重要文化財15点、重要美術品19点を含みます。